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札幌高等裁判所 昭和59年(ラ)13号 決定

抗告人 飯塚啓三

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。抗告人が函館地方裁判所昭和五六年(ワ)第五三三号所有権移転登記抹消登記手続請求事件について昭和五九年一月一四日にした裁判官甲野太郎に対する忌避の申立ては理由がある。」との裁判を求めるというのであり、本件抗告の理由は、別紙記載のとおりである。

二  そこで、判断するに、本件の本案である函館地方裁判所昭和五六年(ワ)第五三三号所有権移転登記抹消登記手続請求事件(原告田中満、被告田中藤子外二名)の訴訟記録によれば、抗告人は、右事件について被告らの補助参加人として訴訟に関与していること、抗告人は、昭和五九年一月一四日、右事件の担当裁判官に対する本件忌避の申立てをしたことが認められる。

ところで、補助参加人は、その法的地位に照らし、関与している事件について忌避の事由があるときは、少なくとも、被参加人が忌避申立権を喪失せず、かつ被参加人の行為と抵触しない限り、忌避の申立てをすることができるものと解するのが相当である。そして、本件においては、被参加人が忌避申立権を喪失したこと(民訴法三七条二項但書参照)及び本件忌避の申立てが被参加人の行為と抵触することを伺わせるような事情は、何ら認めることができない。

そこで、さらに進んで、忌避の事由の存否について判断するに、同条一項の「裁判ノ公正ヲ妨クヘキ事情」とは、裁判官と事件との関係から、公正な裁判を期待することができないと認められる客観的合理的な事情をいうものと解すべきところ、抗告人の主張する忌避の事由は、要するに、本案事件とは別の訴訟事件の判決(昭和五八年一二月一三日言渡)における前記事件の担当裁判官の証拠の取捨選択及び認定判断等が不当であるとするものであって、到底右にいう公正な裁判を期待することができないと認められる客観的合理的な事情に該当するものということはできないから、抗告人の本件忌避の申立ては、主張自体失当たるを免れないことは明白であるものというべきである。

三  そうすると、補助参加人は、固有の忌避申立権を有しないとし、本件忌避の申立てを不適法として却下した原決定は不当であるが、前示のとおり本件忌避の申立てが理由がないことは明白であるから、当審において直ちに抗告棄却の決定をすることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 奈良次郎 裁判官 藤井一男 柳田幸三)

〈以下省略〉

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